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胃に穴があく

胃に穴が開く「胃潰瘍」とは?

胃の痛みや不快感、食後のもたれ…。これらの症状、もしかすると「胃潰瘍」かもしれません。
胃潰瘍は放っておくと、最悪の場合「胃に穴が開く=胃穿孔」といった危険な状態に進行することも。
この記事では、胃潰瘍の原因や初期症状、治療・予防方法について、専門的にわかりやすく解説します。

胃潰瘍とは?悪化すると胃に穴が開くことも

胃潰瘍が悪化し、胃の壁に穴が開いた状態(胃穿孔)のイメージ図胃潰瘍(いかいよう)とは、胃の粘膜がただれ、胃の壁が深く傷ついた状態を指します。
主な症状には胃の痛み、胸やけ、膨満感などがあり、特に空腹時や食後に痛みを感じることが多いのが特徴です。
進行すると胃からの出血や、さらに重症化すると胃に穴が開く「胃穿孔(いせんこう)」へとつながることもあります。胃穿孔になると、胃の内容物が腹腔内に漏れ出し、腹膜炎など命に関わる緊急状態を引き起こすため、速やかな受診が必要です。

40歳以上の中高年に多く見られますが、近年ではピロリ菌感染やNSAIDs(痛み止め)の使用により、20~30代の若年層にも増えています。症状が軽くても「胃が荒れているだけ」と自己判断せず、異変を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。

胃潰瘍の原因│どうして胃に穴があくの?

「胃に穴が開く」という表現はショッキングですが、多くの場合は胃潰瘍の悪化によって起こります。
ここではまず、胃潰瘍の原因を知ることで、穴があくリスクについても理解を深めましょう。

ピロリ菌感染
(ヘリコバクター・ピロリ)

胃潰瘍の主な原因のひとつがピロリ菌への感染です。
幼少期の感染をきっかけに胃内に長期間とどまり、胃粘膜に慢性的な炎症を起こします。
感染していても症状が出ない場合もありますが、除菌しない限り胃潰瘍や胃がんのリスクが続くため、保菌が判明した際は除菌治療がすすめられます。

NSAIDs(痛み止め)などの薬剤

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や一部の薬剤は、胃粘膜を守る働きを弱め、胃酸によるダメージを強める作用があります。
特に高齢者や長期服用者では、胃潰瘍から胃穿孔(穴が開く)に至るケースもあるため注意が必要です。

ストレスや生活習慣の乱れ

過度なストレス、暴飲暴食、喫煙やカフェインの過剰摂取なども、胃酸分泌の増加や胃粘膜の防御力低下につながり、胃潰瘍のリスクを高めます。
慢性的にダメージが蓄積すると、潰瘍が深くなり、最終的に穿孔へと進行することがあります。

その他の要因

急性胃炎、ウイルスや細菌性の胃腸炎、外傷などもまれに胃潰瘍・胃穿孔の原因となることがあります。
いずれの場合も、早期発見・早期治療が重症化の予防につながります。

胃に穴が開くと、どんな症状が現れる?

「胃に穴が開く」状態の多くは、胃潰瘍の悪化によって引き起こされます。
ここではまず、胃潰瘍の段階で現れやすい症状についてご紹介します。

胃潰瘍による主な症状

  • みぞおちを中心とした上腹部の痛みや不快感
  • 空腹時や食後に出る胃の痛み
  • 背中の痛み
  • 吐き気・胃もたれ
  • 食欲不振・腹部膨満感
  • 黒っぽい便や吐血(出血がある場合)

胃潰瘍が悪化して胃に穴が開き、内容物が漏れ出している状態のイラスト出血を伴う場合は、黒色の便や、血が混ざった吐物が見られることがあります。また、出血量が多いとめまい・冷や汗・血圧低下など、貧血に似た症状が現れることもあります。

胃潰瘍を放置すると、傷が深くなって胃の壁に穴が開き(胃穿孔)、胃の内容物が外に漏れ出すことがあります。その結果、腹膜炎を引き起こすリスクがあり、激しい腹痛を伴う緊急状態になるため、注意が必要です。

胃に穴が空く前兆は?

胃潰瘍が進行した際に現れる初期のサインが、胃に穴が開く前兆になることがあります。
次のような症状が続いている場合は注意が必要です。

  • お腹の張り・膨満感
  • みぞおちの鈍い痛みや不快感
  • 胃もたれ、食欲不振
  • 空腹時や食後の胃痛

これらの症状が数日~数週間続き、徐々に痛みが強くなる場合、
潰瘍の悪化や穿孔の前触れである可能性があります。
胃の不調を感じたら、「いつもと違う」と思った段階で受診することが大切です。

どんな検査でわかる?胃潰瘍・胃穿孔の診断方法

胃潰瘍・胃穿孔の診断のために内視鏡検査を行う女性医師「胃に穴が開く」といった状態の多くは、胃潰瘍の悪化が原因です。そのため、まずは胃潰瘍の有無や状態を正確に調べる検査が必要となります。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

胃カメラは、最も確実な診断方法です。
胃内の粘膜を直接観察し、潰瘍の位置・大きさ・出血の有無などを詳細に確認できます。

必要に応じて組織の一部を採取(生検)し、胃がんとの鑑別も行えます。
また、出血があればその場で止血処置を同時に行うことも可能です。

胃カメラについて
詳しくはこちら

血液検査

血液中の炎症反応や貧血の有無を調べます。
出血や体内の炎症状況を把握することで、重症度の評価や他の疾患との鑑別に役立ちます。

胃潰瘍による出血が多い場合は、貧血の症状(めまい・ふらつきなど)が数値としても現れます。

ピロリ菌検査(呼気・便・尿)

胃潰瘍の主な原因の一つである「ピロリ菌」の感染有無を調べる検査です。
呼気検査、便検査、血液検査などがあり、除菌治療が必要かどうかを判断します。

腹部CT検査

CT検査では、胃の外側から穿孔の有無や、腹腔内の炎症の広がりを確認します。
胃穿孔や腹膜炎を疑う際に非常に有効な検査です。

また、内視鏡では見えない周囲の臓器との関係性や、合併症の有無も評価できます。

治療法まとめ|胃潰瘍と胃穿孔の対処法

胃潰瘍や胃穿孔の治療は、症状の重症度や合併症の有無によって異なります。
ここでは、軽症から重症へ進行した場合の治療の流れをご紹介します。

軽症(胃潰瘍):外来での薬物治療

症状が軽い場合は、胃酸の分泌を抑える薬(PPIやH2ブロッカー)を内服しながら、外来通院で治療を行います。
必要に応じて、ピロリ菌の除菌治療も併用します。

中等症(出血・貧血):入院と内視鏡的治療

胃潰瘍が出血を伴う場合や、潰瘍が広範な場合は入院が必要です。
内視鏡(胃カメラ)によって、止血剤の注入や、クリップ・電気焼灼による止血処置が行われます。

出血量が多い場合には、輸血や鉄剤投与など、貧血に対する治療が追加されます。

重症(胃穿孔):緊急手術が必要に

胃に穴が開いた状態(胃穿孔)では、腹腔内に胃の内容物が漏れ出し、腹膜炎を引き起こす危険性があります。
この場合は緊急手術が必要になります。

腹腔鏡手術

小さな穴から内視鏡と手術器具を挿入し、体への負担を軽減した治療法です。
状態が安定している場合に選択されます。

開腹手術

お腹を開いて穿孔部を直接確認し、穴を縫い合わせたりパッチで補強する方法です。
炎症の範囲が広い場合や状態が不安定な場合に行われます。

胃に穴が開くのを予防するには?

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌は、胃潰瘍や胃がんの原因となる細菌で、胃穿孔のリスクを高めます。ピロリ菌に感染している場合は、医師の指導のもと、除菌治療を受けることが大切です。除菌治療は、抗生物質と酸を抑える薬を組み合わせて行います。

ピロリ菌除菌について
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薬の適切な服用

痛み止めや解熱剤など、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる薬は、胃を傷つける可能性があります。これらの薬を服用する際は、医師や薬剤師に相談し、指示通りに服用しましょう。必要であれば、胃を保護する薬を併用することも検討されます。

ストレスを溜めない

ストレスは、胃の働きを悪くし、胃潰瘍を引き起こす原因となります。ストレスを溜めないように、リラックスできる時間を作りましょう。ヨガや瞑想、軽い運動などもおすすめです。

バランスの取れた食事

規則正しい食生活を送ることが大切です。暴飲暴食は避け、刺激物やアルコールの摂取は控えましょう。特に、辛いものや酸っぱいものは胃を刺激するため注意が必要です。


定期的な健康診断

胃カメラ検査など、定期的な健康診断を受けることで、胃の異常を早期に発見し、治療することができます。 胃に穴があく(胃穿孔)は、日頃の生活習慣を見直すことで予防できる部分も大きい病気です。上記に挙げた以外にも、規則正しい生活を送ることや、十分な睡眠をとることなども大切です。もし、胃に違和感を感じたり、持続する痛みがある場合は、お早めにご相談ください。

胃に穴があく(胃潰瘍・胃穿孔)は、日頃の生活習慣を見直すことで予防できる部分も大きい病気です。上記に挙げた以外にも、規則正しい生活を送ることや、十分な睡眠をとることなども大切です。もし、胃に違和感を感じたり、持続する痛みがある場合は、お早めにご相談ください。

 

胃に穴が開くことに関するQ&A

ロキソニンを飲み過ぎると胃に穴が開くって本当?

ロキソニンなどの痛み止めは、服用量や期間によっては、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のリスクを高める可能性があります。 医師に指示に従い、容量用法を守り、長期間内服しないようにしましょう。

胃に穴が開くのはどんな感覚ですか?

胃潰瘍が悪化し胃に穴が開くと、まずうずくまってしまうほどの、みぞうちに激痛が生じます。この穴から胃液が漏れ出すことで、腹膜炎を引き起こし、お腹の中に広がった胃液が腹膜を損傷してしまう深刻な状態となり、命に関わることもあります。 そのため、胃穿孔が疑われる場合は、緊急治療が必要となります。

胃に穴が開いたら何日で治りますか?

胃潰瘍の治療には、通常6~8週間程度かかると言われています。 症状が改善したと感じても、自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従って、処方された薬を最後まで服用することが大切です。 また、喫煙、飲酒、睡眠不足、ストレスなどは、胃潰瘍の再発や悪化を招く可能性があります。 治療中はもちろんのこと、完治後も、禁煙、禁酒を心がけ、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動など、規則正しい生活を送り、ストレスをため込まないように意識しましょう。

胃に穴が開いたら入院が必要ですか?

胃潰瘍は、内服治療で回復することが多く、入院せずに治療できるようになりました。 ただし、出血を伴う胃潰瘍の場合には、入院治療が必要となるケースもあります。 また、胃潰瘍が進行し、胃に穴が開いてしまった場合には、手術が必要となることもあるため入院が必要となります。